【番外】哀しい哉 悲しい哉…
多くの弟子の中でも、空海が最も深い愛情を注いだ弟子が、智泉でした。
空海がエリートの道を捨てて突然仏教を志し、山林修行に明け暮れていた20代の頃。
8年間、一日も休まず難工事を続けた智泉は無理がたたり、ついに倒れる。報を受けた空海は駆けつけた。必死の祈りも虚しく 智泉は37歳の若さで命を引き取ります…。
その瞬間、空海は絞り出すようにつぶやいた。
哀しい哉 哀しい哉 哀れが中の哀れなり
悲しい哉 悲しい哉 悲しみが中の悲しみなり
哀しい哉 哀しい哉 また哀しい哉
悲しい哉 悲しい哉 重ねて悲しい哉
ものすごい悲しみだ。読んでるこちらまで胸が苦しくなるような悲しみの塊が積み重なって迫ってくる。
私たちが訪れた日も、智泉が好きだったという紫陽花が見事に咲いていました。
元は三重塔に納められていた
普賢菩薩騎象象。
画技に優れていた智泉が、空海の指導に基づいて制作したとの事です。
全体にほっそりとされていて、たおやかな佇まい。清楚で気品に満ちたお顔の普賢様と、蓮のつぼみを鼻先に持って笑っている白い象。
この普賢菩薩様自身も、どこか優美で静かな女性らしさを感じますよね。
智泉大徳の事、智泉を想う空海の事を胸に、
先日私も静かに合掌させていただきました。